サーバルーム空調の冗長性を数値化する
サーバルーム空調に冗長性を持たせるのは、必要だということはわかります。しかし、どの程度冗長性を持たせるのがよいのでしょうか。
企業ポリシー、コスト、経験則、想いなど、複雑に絡み合うために、何が正解かはそれぞれになります。ましてや、空調は空気の流れがあるために、必要な気流が正しくICT機器に到達できているかも重要であることから、熱容量(kW)だけでは導けない難しさもあります。
気流については、別の機会に論じるとして、いったん「数値化」してみることに着眼したいと思います。
では、まずはどの程度の冗長性を持たせることを目標とするのでしょうか。
我が国では、既に皆さまがご承知おきされているであろう、特定非営利活動法人日本データセンター協会(略称:JDCC)があります。
JDCCでは、データセンターの構築にあたって、求める信頼性を実現するためのファシリティ内容を定めた基準として、課題をまとめて解決するために、日本の実情に即した日本独自のファシリティスタンダードを目指して、2010年に「データセンター ファシリティ スタンダード」を制定しました。
最新版はアップデートされ続けており、「ティア」という表現を用いて、サービスレベルを区別しています。
着眼する点は、停電(短時間、長時間)、機器故障やメンテナンスなどの影響を受けても冗長性が担保されているかどうか、それぞれがティア1~ティア4でセグメンテーションされ、様々な設備や運用手法を細分化しています。
空調機も同様に、ティア毎にN、N+1、N+2と評価しています。
詳細はJDCCに入会のうえ、「データセンター ファシリティ スタンダード」を手にしていただきたいと思います。
さて、今回のテーマとなる「冗長性を数値化する」というテーマです。
下記の図1と2は、数値化したものを簡易的に示したものとなります。
Nは100%の設計負荷値を担保できる容量と捉えてみてください。
数値化するにあたり、1台の空調機に何%の容量を持たせるかを入力してみます。
N値の空調機にそれぞれ何%持たせるかを仮定して、N値の100%を目指し、台数を割り振って加算していきます。
この図では、N=1~3台ということイメージになります。
N+1では、仮定した台数の空調機が、障害により故障したり、メンテナンスを行なった場合の冗長機として、同じ容量の空調機を1台加算し、冗長性を保つのです。
N+2では、同じ容量の空調機を2台加算します。
ご覧の通り、「N+1」よりも、「N+2」の方が、冗長性が高いことがいえます。
また、別の視点でみると、台数分散する方が、より小さい容量の空調機を設置できるということもあり、空調機単体のコストや設置スペースという点で、より小さい容量の空調機の方が利点があります。
実際の空調設備全体のコストという点においては、配管やダクトの構築費を勘案する必要があり、必ずしも台数分散することの方がメリットが高いとはいいきれないですが、「数値化ベース」では、効果が高くなります。
どうでしょうか?
「数値化」することは、ご自身の「理想」に対し、客観視した事実を見つめなおすツールにはなりえませんでしょうか?
客観視は大変難しいです。
個々で思索する以上、主観視となってしまうことになかなか気づけないからです。
できれば、チームで忌憚ない意見を出し合うブレーンストーミングを導入することが望ましいのですが、一度ご自身の意見を整理する意味でも、「数値化」を活用してみることをお勧めします。
プロジェクトマネジメントやコンサルティングでは、プロコン(PROS/CONS)という分析や評価の手法があります。
メソドロジーとして、様々な分析をしてみて、承認プロセスを段階的に経ていくことが、ステークホルダーに理解していただく方法のひとつと思いますが、「数値化」することは、理解を得やすい方法のひとつであると思います。
DC ASIAでは、皆さまのデータセンターのコンサルテーションを積極的に行っています。
相談してみたら、データセンター構築や運営のヒントが見つかるかもしれません。
データセンターファシリティの知見について、DC ASIAは小さい会社ながらも自信を持っています。
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