リアドア空調、『パッシブ vs アクティブ』
最近では、HPCやスーパーコンピューターの分野だけでなく、クラウドサービス展開にも利用が広まってきているリアドア空調(RDHx: Rear Door Heat Exchanger)ですが、リアドア空調と言っても大きく分類すると、パッシブ型とアクティブ型の2つのシステムに分類することが出来ます。今回は、この違いや、あなたが利用すべきリアドアはどちらなのか?を考えていきましょう。
リアドア空調の種類と概要
まず、違いは何なのか?ですが、主には、下記となります。
- リアドア空調(RDHx)
- ラックの背面扉の代わりに、熱交換器が内蔵された扉を取り付け、サーバー排熱をこの熱交換器で、すぐさま冷却してマシン室には、冷やされた冷気を吹き出す空調機です。
- パッシブ型リアドア空調(PRDHx: Passive RDHx)
- あくまで熱交換器のみで構成されたリアドア空調機です。はサーバーの冷却ファンにより作り出される気流を受動的に受けて、熱交換器を介し空気の冷却を行います。
- アクティブ型リアドア空調機(ARDHx: Active RDHx)
- 熱交換器だけでなく、ファン等を内蔵した扉で構成されたリアドア空調機です。サーバー排熱が熱交換器を通過する際の空気抵抗分をファンにより補助することにより、より大風量を熱交換することができます。
- パッシブ型リアドア空調(PRDHx: Passive RDHx)
- ラックの背面扉の代わりに、熱交換器が内蔵された扉を取り付け、サーバー排熱をこの熱交換器で、すぐさま冷却してマシン室には、冷やされた冷気を吹き出す空調機です。
どちらが良いの?
先に結果をお伝えしますが、一概に、どちらが良いとは言えません。但し、いくつかの要点で考えるとケースバイケースでどちらの方が望ましいかを考えることが出来ます。各々の方式による『良いところ』・『悪いところ』を考えていきましょう。
パッシブ型リアドア空調
まず、パッシブ型リアドア空調機ですが、ファンなどが無く、あくまで受動的な冷却を行うため、想定している範囲では、100%以上の冷却が可能です。
- 良いところ
- リアドアでの電力使用がゼロであること
- 必然的に、PUEを考えた場合、PUE効率は高くなる
- 構成部品が少ない為、障害率が低い
- 構成部品が少ない為、ローコストである
- リアドアでの電力使用がゼロであること
- 悪いところ
- 部屋を冷やし過ぎてしまうことが有る ※冷水の流量自動制御機能が備わっている場合、その限りではない
- 露点温度以下の冷水を用いる場合、結露のリスクが高まる
- サーバー負荷が大きくなってきた場合、熱交換器の空気抵抗が大きくなることにより、必要以上にサーバーの冷却ファンのエネルギーが大きくなる(一般的に20kW/Rack程度が境界)
- この場合、PUEは良いが、システム全体の電力量を考えた場合、アクティブ型リアドア空調に比べ大きくなってしまうことが有る
アクティブ型リアドア空調
アクティブ型リアドア空調については、熱交換器の空気抵抗分をサポートするファンが備わっている為、より大きな発熱環境に対応することが出来ます。
- 良いところ
- パッシブ型に比べ、より大容量(~75kW/Rack程度まで)のシステムに対応可能になる
- PUEの効率は落ちるが、システム全体の消費電力を落とせる(一般的に20kW/Rack以上において)
- サーバーの冷却ファンによる無駄なエネルギーが発生しない為
- 利用する冷水温度を上げやすく、フリークーリングシステムとの相性が良い
- 悪いところ
- ファンが搭載された分、PUEの効率は落ちる
- 構成部品が多くなる為、パッシブ型に比べ障害率が高くなる
- 構成部品が多くなる為、パッシブ型に比べ高コストである
- 部屋を冷やし過ぎてしまうことが有る ※冷水の流量自動制御機能が備わっている場合、その限りではない
- Motivair社製ChilledDoor の場合、流量の自動制御機能が備わっています
- 露点温度以下の冷水を用いる場合、結露のリスクが高まる
- Motivair社製ChilledDoor の場合、露点以上の冷水を用いる為、結露の心配がなくなります
結論
約20kW/Rackの環境を一つの目途として、それ以下の場合、パッシブ型リアドア空調を選択した方が望ましいケースが多く、20kWを超える様な環境の場合、アクティブ型リアドア空調を選択した方が望ましい結果を得られることが多いです。
また、パッシブ型、アクティブ型の2つのアプローチを考える場合、総電力を考慮することも重要となり、これは、特にビジネスにおいて、広く知られることとなったPUEが絶対では無いということも言えます。PUEだけを考えるとサーバーなどのIT機器に大容量のファンを搭載すれば良いという考えに至るかもしれませんが、CO2削減や全体電力削減など更に大きく考えた場合、PUEは必ずしも、望ましい指標とは言えないでしょう。PUEは、基本的には良い指標ですが、その限りではないことを覚えておきましょう。
さらに、近年、注目されてきているフリークーリング(自然エネルギー利用)を採用する際は、アクティブ型のリアドア空調により、より大きな電力削減に向けたアプローチを可能とします。フリークーリングによる冷却について、具体的に考えられたい方は、是非、弊社まで、御相談くださいませ。
尚、ファンに利用されるエネルギーについては、先日の『送風機の法則(ファンの法則)を御存知ですか?』でも紹介しておりますので、合わせてご参考下さいませ。
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