空冷空調設備の寒冷地仕様って?

T. Mogi

今回は空冷空調設備の寒冷地仕様についてお話ししたいと思います。
言わずもがな、サーバールームはIT機器という、年がら年中ストーブを焚いている部屋を冷却するために、24時間365日「冷房」しなければいけません。
水冷空調であれば、チラーや冷却塔を通じて、外部に熱を排出しているからであり、空冷空調であれば、室外機を通じて、外部に熱を排出しているからですね。
実はこの寒冷地仕様の話しは、主に暖房で使われるキーワードなのですが、サーバルームのことなので、「冷房」のことだけわかればいいと思われるかもしれません。
しかし、よりイメージをつけやすくするために、寒冷地の暖房についても触れてみました。

 

寒冷地仕様とは?

当たり前のことを言うようですが、日本の冬は大変厳しいですよね。
冬場に沖縄へ出張に行った筆者は、若干暖かさを感じつつも、手持ち無沙汰になったコートを着ていたところ、タクシーの運転手さんに、「内地の方」ですよね、と言われたことがあります。
沖縄では、コートを着ているのが地元の方には見られないくらい特徴的であり、温暖な気候だからでしょうね。
でも、出発までコートは必須アイテムで、ないと寒くて寒くてどうしようもありません。
ちょっと本線から逸れましたが、日本という島国で、北から南まで、世界という広い視野から見ると狭いと思われがちですが、地方によって気温はかなり違うということを申し上げたいだけです。
つまり、地域によって、温度差がかなりありますよね。

では、空冷空調の話しに戻しますが、申し上げていますように、「熱を外部に排出して」というのが、非常に大切な論点になります。
サーバルーム内を冷却するには、屋外に熱を排出するというのが、普遍的な考え方になりますが、温暖な地域ではともかく、本州以北ではどうなるでしょう。
冬場では0℃は関東でもザラで、氷点下は当たり前ですね。
本当に寒い地域では、-30℃以下という地域もあるようです。
つまり、寒い地域で熱を排出しようとすると、外気温がマイナスのところに、熱を排出することになるのです。
ヒートポンプの原理は、高温から低温へ温度を遷移させることを逆にさせる訳ですから、冷たいものをさらに寒い地域に排出しようとするには、無理が生じることになります。
よって、室外機の設置条件として、マイナス何℃までという仕様が明記されます。

よく、「寒冷地仕様」というエアコンを見ます。
昔は、特に北海道では、夏場にエアコン(冷房)をつけるということはなかったと思いますが、ここ近年地球温暖化の影響もあるかもしれない中、夏場では本州と同じように35℃というような、とてもではありませんが冷房がないと過ごせないようになっています。
ですが、冬場では厳しい寒さは変わらずなので、暖房も必要です。
夏でも冬でも活躍できる、エアコンを選びたいですよね。
しかし、この冬場でも活躍するというのが、ここでのポイントになってきます。
前述したように、室内の温度を室外に排出させる訳ですから、極寒の外に熱を排出させようとすると、室外機が凍ってしまいます。
それでは、ヒートポンプのサイクルが正常に機能せず、安全機能により空調機自体が停止してしまいます。
よく言われる、フェールセーフですね。
室外機から正常に熱を排出できるようにするには、いくつかの工夫が必要になります。
よりパワフルな動力を使った圧縮機を搭載したり、雪害を防ぐように防雪フードをつけたり、凍結しないように室外機にヒーターをつけたりして、室外機が凍ったりしないように熱交換をきちんとできるようにしています。
なので、「寒冷地仕様」といわれるエアコンは、冬場では電源をより多く必要とするのですね。

ですが、それはあくまでも、人が快適に過ごせるするように、「暖房」の運転をすることになります。
そういった機能を設けるため、寒冷地仕様エアコンの設置条件は、-15℃~-25℃というものがあります。

先日、ヒートポンプについて、触れさせていただきましたが、そちらはこちらの記事を一読いただけますと、より理解が深まるのではないかと思います。
そもそもどうやってサーバルームを冷やしているのか?(空冷空調の基礎)

おさらいまでに、ヒートポンプの参考図を添付しておきます。

 

 

 

参考図:ヒートポンプ概略

 

 

 

サーバルームは年間冷房

しかし、データセンターでは、年間で冷房の要求です。
空冷空調設備は外気温度が低くなると制御が働いて停止してしまいます。
それは、冷房運転は室外機から放熱するので、より放熱効率がよくなって冬場でも運転すると思われがちですが、そんな無茶な運転はできなくなっています。
あまりに冷えすぎるので高温・高圧のガスがより簡単に冷却されて液体になることで、必要以上に圧力が下がり、「低圧カット」という状態になります。
この安全制御で、空調機が停止してしまうのですね。
ちなみに、低圧カットとは、冷媒管に流れている冷媒が漏れてしまう現象に近いため(それではエアコンは機能しません)、停止させるものになっています。
サーバルームでは、年間冷房ですから、メーカーでも改良を重ねているものの、それでも-15℃とかが限界なようです。

 

さいごに

エネルギー(電気や空気)を使用して、サーバルームを冷やし続けるには、困難が伴うということや、なぜそうなのかということを是非知っていただきたいと思いました。
空調をひとことでいうのはとても簡単ですが、設置条件がありますので、空調機の仕様書などから、屋外設置が何℃まで大丈夫かどうかというのは、寒い地域の方におかれましても、確認していただくことをお勧めします。

では、冬季においては、暖かい熱を寒い外気に触れさせると、勝手に冷えてくれれば・・・となりますよね。
そうなってきますと、次は「フリークーリング」ということになります。
自然が相手ですから、効率がよく電気代もかかりませんし、持続ということからも冬季では安定もします。
改めての機会になりますが、「フリークーリング」についても述べたいと思います。

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