~シリーズ~ サーバルーム空調と配線の関係性を考えてみる:フリーアクセス床と配線の関係
以前、「コールドアイルとホットアイルの大きさをどうやって決めていますか」という記事を書き、反響を得たことがあります。
そこでお話しした通り、整然とレイアウトすることはとても重要です。
今回、さらにお話しを発展させますが、見えない床下について、どれくらい意識するポイントがあるか、皆さまはご存知ですか?
床下とひとことでいっても、話しは多岐に渡ります。
大きく分けて、空調、フリーアクセス床、配線が関係してまいりますが、これらの関係性を理解することは、とても重要です。
特に空調に関してですが、うまくいかない理由として、レイアウトもさることながら、床下も大きく関係してまいります。
段階的にこれらについて、紐解いていきたいと思います。
電源配線とネットワーク配線
電源配線ですが、ひとことで配線といっても、それぞれセグメントが分かれます。
例えば、電力会社から受電まで、受電設備からUPSまで、UPSからPDUまで、PDUからラックまでなどです。
単一回線では、即停電(発電機やUPSがあれば大丈夫かもしれませんが)となるため、ティア3以上を目指すのであれば、複数回線や複数回線(ホットスタンバイ)は必須です。
だいたいデータセンターのサーバルームでは、IT設備の停電をなくすために、複数回線で配線されることが一般的です。
1本の電線で事足りても、冗長性を加味して2本の電線をひくので、それだけ配線路は倍の容積が必要になります。
また、ネットワーク配線も同様で、通信断を防ぐために、ティア3以上を目指すのであれば、複数回線は必須となっています。
尚、ここでいう「ティア」とは、日本データセンター協会(JDCC)で提唱している、データセンターファシリティスタンダードのティアを指しています。
この「ティア」について、弊社が運営しているData Center Caféに、詳しい記事を投稿しております。
そして、複数回線の他に、電源配線とネットワーク配線は、並走させてはいけないということも考えねばなりません。
誘導電圧による減衰を避けるため、総務省の基準では、0.3m(300mm)以下に並走させないというルールもあります。
よって、配線の敷設面積もたくさん必要になるのです。
密集するエリア
電源であればPDU(分電盤)、ネットワークであればネットワークラックから、それぞれのサーバラックに対して、配線を行ないます。
よって、出口はそれぞれバラバラでも、入口は限られるために、密集するエリアが生まれます。
ありがちなことですが、あまりに密集させすぎて、フリーアクセス床を開けると配線がパンパンにつまっていて、下手をすると、床自体が閉まらないケースもあります。
ある程度密集するのは、仕方ないことですが、分散させることを考えないと、空調に影響を与えます。
ご存知の通り、フリーアクセス床内に冷風を送る空調システムを採用するならば、配線がつまっていると、冷風の通り道を塞いでしまうことになります。
熱容量(kW)が足りていても、熱だまりを起こす要因で挙げられることとして、フリーアクセス床内のエアフローが問題になるのです。
床の高さ(Uptime Tier)
Uptime Tierでは、Tier毎に、床の必要な高さを定義しています。
Tier1では300mm、Tier2では450mm、Tier3では750~900mm、Tier4では750~1000mmとしています。
いかにも広い国土を持つ米国ならではの発想ですが、フリーアクセス床内のエアフローを重視するには、それだけ高さが必要だろうというのは、かなり昔(Uptime Tier 2008)から言われていることなのです。
日本では、そこまで深い床下スペースを確保することは稀で、それぞれの設備で必要な高さを意識し、概ね500mm前後としているところが一般的ではないでしょうか。
よく見られる床下の問題点
これまでたくさんのサーバルームを見てきましたが、図のような問題点を抱えるところが多いように見受けられます。
〈問題点〉
・電源配線とネットワーク配線の該当ラックへの集中
・壁面に設備が集中
・空調側通路に配管や配線が集中
ここでは、壁面に空調が集中しています。
空調はCRAC(Computer Room Air Conditioner)ですと、大型であるため、壁面に設置するのですが、空調通路は冷媒配管やドレン配管が集中し、さらに配線もそこへ通さざるを得ないため、大変混みあいます。
また、分電盤も壁面に設置し、さらに電源幹線の敷設上、連続して設置します。
よって、ラックへの個別配線は分電盤出口から集中せざるを得ません。
そして、ネットワークラックからは、大量のネットワーク配線を敷設するため、ネットワークラック付近に集中します。
皆さまのサーバルームの問題点は、このようなケースが多く見られませんか?
「サーバルーム空調と配線の関係性を考えてみる」という題にしましたが、シリーズ化しながら整理していきたいと思います。
取り急ぎでは、問題点をまとめるに留め、次回以降で解決策をお話ししたいと思います。
DC ASIAでは、皆さまのデータセンターのコンサルテーションを積極的に行っています。
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