レガシーシステムの代わりに導入したシステムがまたレガシーとなることのないよう注意すべき ~総務省「令和3年版情報通信白書」

K-Iwasaki

先月2021年7月に総務省が、「令和3年版情報通信白書」を発表しました。
この白書(ホワイトペーパー)では、我が国のデジタル化の歩みから現状、課題、そして将来に向けての提言など幅広く記されていますが、その中でも第1章「デジタル化の現状と課題」の一部内容から、弊社がソリューションを提供する「データセンター運用」における課題と照らし合わせて考えてみました。

DX実施を阻害する制度・慣習

当レポートでは、まず「デジタル・トランスフォーメーションの実施を阻害するものとして規制・制度や文化・業界慣習の存在を挙げる企業は多い」と報告しています。

法令に定められた規制・制度や業界横断的な慣習を一社の力で変えることはなかなか難しいが、社内に限定した制度・慣習の変革は、上層部の判断一つで変革することが可能である。例えば、業務をデジタルで完結できない手続き(書面・対面・押印など)、リモートでの勤務を認めない就業規則、端末やデータの社外持ち出しを全面的に禁止するセキュリティポリシーなど、見直すべきポイントは随所に存在している。

~第1章:デジタル化の現状と課題 第2節:企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題から引用

これは我々がデータセンターのIT設備インフラの運用改善ソリューションを国内企業に提案する中で常に付きまとう大きな課題でもあります。システムの改革をドラスティックに行うには過去のシステムや慣習からの大いなる変革が求められます。しかし、なかなか過去の慣習から抜け出せず、あるいはレガシー遺産を何とか維持しながら移行したいという企業様側の思いもあり、一筋縄ではいかないケースが多々あります。
しかし、このように躊躇をしている間にも、先行する米国や中国をはじめとしたIT先進国である海外諸国との差が広がってしまっているのではないか?という懸念があります。

さらに同白書では次のようにも記されています。

デジタル企業がデジタル技術を活用することで新たなコスト構造に適したビジネスモデルを構築することは、既存企業にとって大きな脅威となる。それに対抗するには、既存企業の側も新たなデジタル技術を導入・活用することでビジネスモデルを変革させることが重要となる。
日本企業はアンケート結果からは米国やドイツの企業と比べると、デジタル活用は不十分と言わざるを得ない結果となっている。他方、新興国ではデジタルの普及が急速に進んだ結果、新たなデジタル企業が相次いで登場し、世界への進出を図っている。市場がグローバル化する中、国内外を問わず出現するディスラプターに対抗するには、デジタル技術を導入・活用することで新たな付加価値を付与する取組を進める必要がある。

これは日本国内のあらゆる業界全般における全体的な傾向を示していますが、その中でも最もIT化(DX化)が進んでいると思われるデータセンター業界でもまだまだ海外企業に比べると腰が重いと感じています。
例えば当ブログでも、海外企業が最新のデータセンターインフラ運用管理システムを導入・フル活用して、データセンターの運用の変革に成功した事例をいくつか紹介していますが、国内企業の多くは簡易的なモニタリングレベルといった、DCIMのポテンシャルの僅かしか活かせていない程度で満足されているように感じます。

デジタル・トランスフォーメーションの課題(既存システム)

ちなみに、このアンケート結果のグラフでは、既存システムに関するデジタル・トランスフォーメーションの課題について示されています。
これを見ると既存システムがいかにDXを阻んでいるかがよくわかります。
しかしこれらの課題は最新のシステムでは当たり前のように実現できているものばかりです。既存システムからのデータマイグレーションはそう簡単ではないかもしれませんが、だからといってこれからもずっとそれを先送りするとどうなるでしょうか?

また、ここでは「デジタル・ディスラプション(デジタルテクノロジーによる破壊的イノベーション)」の懸念についても記されています。
国内企業がDX化を躊躇している間に、海外企業は国内市場への進出を進めています。過去いくつもの国内業界が外気企業によるデジタル・ディスラプションで破壊されたように、データセンター業界周辺でも今後起きる可能性は否めません。

白書のこの章では締めくくりとして以下のように述べてられています。

アンケート結果ではレガシーシステムの存在がデジタル・トランスフォーメーションを進める上での障壁との意見もみられる。従来の業務の進め方を前提に構築されたレガシーシステムを刷新し、クラウド等のウェブ上に存在するリソースの活用を前提とした業務への改革が重要である。従来のレガシーシステムの代わりに導入したシステムがまたレガシーとなることのないよう注意すべきである。

既存のレガシー資産を維持することに注力するあまり、DX化に繋がらないシステムリプレースにならないようにしなければなりません。データセンターインフラ管理ツールもウェブベースのアクセスを前提としたもの、データリソースの利活用が容易かつ十分に行えるものがおススメです。

最新のDCIMツールの詳細についてはこちらからお問い合わせください。


出典:「令和3年版情報通信白書」(総務省)より一部引用・作成

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