グローバルDCIM市場での二つの大きな動き ~Trellis終息とNlyte買収

K-Iwasaki

この一週間ほどの間にグローバルDCIM市場で二つの大きな動きがありました。
ひとつはVertivが同社のDCIMプラットフォームであるTrellisのEOL(End of Life)を発表、もうひとつはNlyte Softwareのキヤリア・グローバルによる買収です。日本国内市場では実績がないため、日本の顧客への影響はほぼ無いと思われますが、両社ともグローバル市場では「最大手」と呼ばれていました。

今回はこれらの大きな動きの概要を筆者独自の見解を交えて解説したいと思います。

Trellis終息

まずVertivによるTrellisのEOL発表についての概要はこうです。
そもそもTrellis DCIMプラットフォームはVertivの前身である旧Emerson Network&Power時代にさかのぼります。Emerson Network&Powerはデータセンターインフラ監視管理系ツールを次々に買収してきました。特に2008年から2009年頃にかけて買収した 「Aperture」「DSView」、そして既存の「SiteScan」の持つ様々な技術を統合し、新たなDCIMプラットフォームであるTrellisの開発を始め、2012年に華々しくローンチしました。

しかし最終的には、Trellisは過剰スペックで、ガッカリさせられるものになりました。Trellisは、アプリケーション開発システム「Oracle Fusion」を利用して開発されており、Trellis上に新しい機能やソフトウェアを構築することができます。これは、Oracle環境を利用している顧客にとってはメリットがありましたが、それ以外の多くの顧客にとってメリットはありませんでした。多くの顧客は、Trellisのアーキテクチャがあまりにも肥大で重いと感じていました。単純に大きく、複雑になりすぎた~これが製品を終息させた主な理由であるとVertivは述べています。

 ”Vertiv has discontinued its DCIM platform, Trellis”(DCD)より引用・抄訳

 

他にも、Trellisの資産管理機能はApreture(Vertivが2017年にEOLを発表)にも長い間劣っていたとされていたりと、機能面においても十分なものではありませんでした。
結果的に既存顧客の失望を生み、TrellisのDCIM市場におけるシェアは徐々に縮小していったようです。
結果的にVertivはTrellisに加え、着々と買収してきたAperture、Data Center Planner、SiteScanなども含めたDCIM製品群を全て葬り去ってしまいましたが、今後の方向性についてはまだ明確ではありません。

一方でDCIM市場は新型コロナのパンデミック以降更に盛り上がりを見せていますが、そのような中でのこの判断は明らかに製品開発や戦略の失敗であると言わざるを得ません。

Nlyte買収

一方、米国の空調設備メーカーであるキャリア・グローバル社が今週DCIMソフトウェアベンダーであるNlyte Softwareの買収を発表しました。

キャリア社は、この買収によりHVAC事業におけるDCIM領域への注力を拡大し、Automated Logic Controls事業を補完する統合ソリューションの創出とともに、持続可能でスマートなソリューションへの注力を促進していくと述べています。
これは奇しくも電源・空調設備メーカーであるVertivが当初目論んでいた戦略と同じに見えます。シュナイダーも同様の動きとして現在もEcostruxure ITという包括的なDCIMプラットフォームを同社のエコシステムの中核製品として展開しています。

しかしVertivの失敗(更には過去数々の大手がDCIMソフトウェア会社を買収した後に失敗している)でもわかるように、単にそれを買収しただけでうまくいくとは限りません。もともと文化が異なる会社の買収をうまく自社内に溶け込ませる難しさに加え、ソフトウェア機能の健全な成長を維持する難しさもあると考えます。
いずれにせよ今後の動きに注目です。

これらの動きをどう見るか?

2010年以降から始まったDCIM市場は2012年頃からしばらくブームが起こりましたが、その当時のDCIMツールは機能面や使いやすさにおいてまだ未成熟であった為、期待して導入した顧客の失望を生みました。そして数多くのレガシーDCIMベンダーは事業に失敗し、市場から撤退しました。このことが2017年頃には市場の停滞を生む原因になりました。今回のVertivの事例もそれと同じく「失敗に終わった旧世代DCIMの市場からの撤退」という図式の延長線上であるものと考えられます。

私たちは、このような悲劇はこの先あってはならないと強く感じており、それが現在の弊社DCIM事業コンセプトの原動力となっています。私たちは20年以上の経験・専門知識と共に、常にお客様の課題解決と成功を見据えての活動を行っております。
また、DCIM製品自体も、重くて複雑で使いづらかったものから、軽くてシンプルで使いやすい次世代DCIMへの世代交代も進んできています。

10年前と比べ、データセンターはかなり巨大化し複雑化しました。そして近年ますます高まる地球温暖化防止のためのエネルギー効率化への動き、年々深刻化する運用スタッフの人材不足問題、更には新型コロナのパンデミック以降定着したリモートワーク。これらの要素全てがデータセンターインフラと管理自体の効率化や自動化を求めるニーズに繋がってきています。そしてそのニーズを解決する手段の一つがDCIMです。

今後お客様がデータセンターの効率運用を求める機会が出てきた際には是非弊社にもお声がけいただければ、全面的にお客様の成功に向けて協力させていただきます。


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