DCIMの真の価値は「キャパシティ管理」と「ワークフローの融合」にあり

K-Iwasaki

「DCIM」という言葉は非常に曖昧です。

日本語にすると「データセンターインフラ管理」となりますが、メーカーやベンダーにより機能範囲が異なることもあり、人によってその解釈はまちまちです。
例えばある人は「データセンター設備を監視するシステム」と言い、またある人は「データセンターのアセット管理システム」と言ったりします。しかし、どちらもDCIMシステム全体を構成する機能の一部であり、そういった意味ではどちらの解釈も正解と言えます。
ただ、実現できる範囲はそれぞれ異なり、限定的です。そこでそれぞれの機能を加えていくことで、それに比例して相乗効果は高まります。最終的に全てを統合化することで、DCIMが本来目指していたソリューションがようやく実現します。
今回はこのポイントを整理しつつ、DCIMが本来目指していたソリューションとは?、DCIMの真の価値とは何なのか?について解説したいと思います。

DCIM成熟モデル

まず、DCIMはその機能範囲に応じていくつかの段階に分類されるというお話は以前お話しさせていただきました。詳しくは以前のブログ、”データセンターインフラ運用管理の成熟へのステップ”、”DCIM成熟モデル”をご覧ください。概要としては以下のように、レベルが上がっていくにつれて機能が徐々に加えられているのがお分かりになるかと思います。

  • レベル1:単体監視
  • レベル2:監視の統合
  • レベル3:アセット情報の統合
  • レベル4:外部システムとの統合
  • レベル5:自律制御

今回は、「レベル3」「レベル4」の具体的な中身について独自に細分化してみました。

単なる管理台帳としてDCIMツールを使うのは「不完全」

データセンター内に導入されたセンサー(Lv1)の計測データを統合し(Lv2)、そしてアセット台帳の管理機能も備えた(Lv3)DCIMツールは以前から市場に出回っていました。

それら製品のいくつかは、ワークフロー(変更管理)機能を持っていましたが、あまり使われてこなかったように思います。その理由はおそらく、ユーザーごとに既に確立された運用フローがある中、当時のDCIMが提供する機能が不完全であったことで、あえて確立された運用フローを置き換える意味が見いだされなかった、ということではないかと考えます。

ということで、多くのケースでLV3 DCIMは、見栄えの良いGUIを被せた「ちょっと便利な管理台帳」として使われてきました。これを今回は「Lv3a」と定義しました。
データを集約させ、それを2Dや3Dの見栄えの良いGUI表示で可視性を高めることは、Excelスプレッドシートの運用と比較すると、もちろん運用面でプラスの効果は生まれます。しかし、それだけではまだ不完全な状態であると考えます。理由は、まだこれでは「受動的な管理」を行っているに過ぎず、根本はExcel台帳での運用形態と変わらないからです。要するにDCIMのデータベースは「単なる参考情報」に過ぎず、実際の作業指示書発行などのワークフローは結局従来のExcelやメールで行っているのです。

これでは投資に見合う効果を得るのは半減してしまいます。
データをDCIMの中でもっともっと利活用していかないと、せっかく統合化した意味がありません。

「能動的な管理」を実現する

DCIMの投資価値を高めるためのひとつの重要なポイントは「ワークフローの融合」です。DCIMのデータベースを「単なる参考情報」にせず、そのデータ自身をワークフローに使っていくことです。

あらゆるデータが集約されていれば、電源空き容量・スペース空き容量・ポート空き容量など、横断的なキャパシティ検索ができます。例えば、新規サーバーの導入計画を立てる際に、運用担当者はそのサーバーが必要とする要件を入れていくだけで、データベースからその要件を満たす候補ラックが抽出されます。
担当者はその中から具体的な計画を立て、それを作業指示書として発行します。作業指示書は管理者の承認を経て、作業担当者にアサインされ、作業担当者は実際の作業を指示書を見ながら完了させます。これら一連の流れをDCIMの中で完結させること、PDCAのようなサイクルをひとつのシステム内で回していくことで、運用効率がさらに高まり、同時にデータの整合性もしっかり維持されます。(今回はこれを「Lv3b」と定義しました)

もうひとつ、Lv4についても少し話しておきましょう。
ワークフローにITSM(ITサービスマネジメント)ツールとの連携は欠かせません。ITSMを使ってワークフローを回している企業も多いのではないでしょうか?DCIMツールでは物理インフラ部分のワークフローを管理しますが、それはデータセンターインフラの一部であり、ITSMとDCIMが連携することでデータセンターインフラ運用全般が統合管理され、投資効果が最大化します。

このように「キャパシティ管理」と「ワークフロー」に至るまでの機能を活用することで、DCIMの真の価値を引き出せるのです。


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