データセンターインフラ運用シーンでも見られるガラパゴス化現象について考える
ガラケーに代表される、日本のガラパゴス化現象。
ガラケーの例では、日本国内のニーズのみに合わせて商品開発をし続けた結果、日本人のみに受け入れられる独特な商品になってしまった、という現象です。
基本的に商品とは市場のニーズを受け入れ開発されるものであり、それ自体何も問題はありません。従来から日本人の製品の品質に対する要求は高いと言われており、その厳しい要求に応えられないとメーカーは生き残ることが出来なくなるかもしれません。こうして国内のメーカーは日本国内のニーズに沿った商品を独自に進化させてきましたが、気が付くと世界の動き(グローバル標準)から大きく取り残されてしまいます。特に、IT業界では世界標準から取り残される事は、最終的に市場から淘汰されてしまう運命を意味します。
ガラパゴスIT
日本企業のITシステムも、欧米とは異なる独自の発展をしてきました。これは既存のパッケージ・ソフトウェア製品よりも、スクラッチ開発されたシステムの採用比率が極端に高いことでもわかります。パッケージ・ソフトウェアや汎用的なミドルウェアを効率良く組み合わせる欧米企業に対し、このようなITシステムは結果として結果としては導入・保守運用でコスト高となるケースが多く見られています。
このような風潮はパッケージ・ソフトウェア製品にも及んでいるようです。パッケージ・ソフトウェアは業界の規制や標準運用プロセス、グローバルで培われてきたベストプラクティスをベースに開発されており、本来は極力標準提供される機能に合わせて利用すべきなのですが、日本企業は自社独自の業務プロセスや細部へのこだわりをパッケージ製品に求め改修を要求し、メーカーはそれに対し追加の個別開発を行うことがあります。
結果的に、品質過剰・複雑化したシステムは汎用性・柔軟性・外部との互換性を失い、運用やシステム維持にも個別の追加対応をせざるを得なくなります。本来は利用ユーザーの利便性を満たす為に個別開発したシステムはいつしか、ITの高コスト構造を生み出しているのです。そしてこのような硬直化したITシステムは、「2025年の崖」でいわれているように、デジタル変革を阻害する要因にもなっています。
データセンターインフラ運用でも見られるガラパゴス化
このような「ガラパゴスIT」はデータセンターのインフラ運用の分野でも根強く存在します。
弊社では、データセンターのITと設備を包括的に管理する、データセンターインフラ管理(DCIM)ソフトウェアを、データセンターの運用効率化、コスト削減ソリューションとして提供しています。そして、その商談を進める段階で、お客様は一定の確率で、「自社の既存運用にマッチした機能」、あるいは「標準ではない既存設備とのプロトコル互換性」など、自社環境に合わせるようカスタマイズや改修を求めてきます。
お客様がなるべく既存の運用を変えずにパッケージシステムを導入したいとされる意向は、当然と言えば当然です。弊社はもちろんそのご要件をしっかり聞き、実現可能性を探ります。しかし、どうしても標準から逸脱したものについては対応が困難となります。
日本国内のソフトウェアメーカーは、冒頭で述べたように、比較的その要求を受け入れ開発してくれる可能性があります。しかし一方、グローバルで展開する海外ソフトウェアメーカーはそうではありません。いかにユーザーが切望しようとも、それがグローバル標準のニーズやベストプラクティスにマッチしていない限り、なかなか対応はしてくれません。
そうなると、日本人ユーザーの要件を汲んで追加開発してくれる日本のソフトウェアメーカー製品が選択されるケースが増えてきます。こうして、ガラパゴス化は更に進んでいくというわけです。
ガラパゴス化は全てにおいて悪い事ではなく、これを全面否定するものではありません。特にアート、芸術ではその独自性が輝きを放つことがあり、ガラパゴス化が良い方向に振れることもあります。しかし、コスト削減や業務の効率化が要求されるIT運用の世界では、独自性は最終的に利用ユーザーの不利益に繋がる可能性があることを理解しつつ、運用を徐々に業界標準に合わせる方向に軌道修正していくことが重要であると考えます。