DCIMって誰のためのもの?
「DCIM(Data Center Infrastructure Management)」という言葉は非常に曖昧です。日本語に直訳すると「データセンターインフラ管理」となります。
DCIMシステムとは、「データセンターインフラ」を「管理」するシステムであるという意味になりますが、「データセンターインフラ」の具体的な定義は曖昧です。
曖昧な単語
「データセンターインフラ」という単語自体は非常に曖昧です。まず、「インフラ」については、よく「ネットワークインフラ」とか「サーバーインフラ」などと呼ばれることがあります。おそらく多くのIT系エンジニアは、「データセンターインフラ」という言葉でネットワーク機器やサーバーを思い浮かべることが多いと思います。しかし、私たちが言う「インフラ」とは、もっと設備寄りの領域を指します。それを区別するために、「物理インフラ」とか「ファシリティインフラ」という言葉が使われることがあります。ただ、しばしばZabbixなどのNMS寄りのツールと混同されがちですが、被る部分はあれど、厳密には目的や対象が異なるシステムとなります。
DCIMは「ファシリティインフラ」を中心に監視および管理するツールですが、この「ファシリティ」という用語によって、新たな混乱が生じる可能性があります。一般的に、「ファシリティインフラ」という用語は、物理インフラ、建物、発電機、空調装置、分電盤、大型UPSなどの設備を指します。分電盤には、UPSからの電源を降圧するために変圧器を搭載した一次側のPDU(Power Distribution Unit)と、PDUからサーバなどへ電源を分配する二次側のPDP(Power Distribution Panel)またはPDF(Power Distribution Frame)があります。(※各社によって呼び方は異なることがあります)
しかし、ITエンジニアにとっては、周辺設備の中にも、ラックやラックUPS、ラックPDU、パッチパネル、ケーブルラダーなどがあります。さらに、物理的アイテムをすべて「ファシリティ」と定義する場合もあります。これらのアイテムは、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などのICT機器に密接に関連しているため、混乱が生じることがあります。
ここで問題になるのが、DCIMではどの部分をカバーしているのか?ということです。
DCIMは、主にサーバールーム内のラックを起点として周辺ファシリティを統合管理することが一般的です。具体的には、PDP/PDF、ラック、ラック内機器、電源、ネットワークケーブルなどが含まれます。DCIMの目的や役割は、主にラック内機器を利用するユーザーに向けられています。各社からリリースされたDCIM製品は、生い立ちによってカバーする範囲が異なるため、注意が必要です。
役割や目的の違い
DCIMは、サーバールーム内のラックを起点として周辺ファシリティを統合管理することが主な役割であるとされています。その目的は、ラック内の機器を利用するユーザーの運用利便性向上に基づいて設計されているためです。これはビル側設備の管理を目的としたBMS(Building Management System)や、ビル側設備の制御/監視を目的としたBAS(Building Automation System)などと異なる点であるといえるでしょう。
一方で、先般経済産業省 資源エネルギー庁からアナウンスされ、4月から施行された「改正省エネ法」では、データセンター業もその対象となり、目標PUE値1.4とする報告義務を求めており、それはつまり設備とIT電力の使用量の両方を管理しなければならないということになりました。このことにより、今まで以上にDCIMとBMS/BASとの連携が求められるようになってきています。
それぞれの立場のニーズに応えるDCIM
このような背景はありますが、幅広い管理領域をカバーするDCIMは、データセンターにかかわるそれぞれの立場にとって運用上必要なツールであるといえるでしょう。一例を以下に挙げてみました。
企業(エンタープライズ)データセンター
- 設備部門:電源・空調設備の運転状況、電力・温度の監視とアラート管理
- ネットワーク管理部門:配線管理、ネットワークリソース利用状況、アラート管理
- サーバー管理部門:サーバーアセット管理(物理・仮想)、IPアドレス管理、保守・契約管理
- ラック利用部門:ラック実装(搭載位置、空き状況)、電力利用状況
- 設計部門:各設備リソース利用状況、分析(傾向・推移)とキャパシティ管理
- CxO:全体の稼働状況概要(ポータルダッシュボード)
ハウジング・コロケーションデータセンター
- データセンター事業者:ラック周辺設備の運転状況監視やアセット管理、PUE値積算、顧客アセット管理(リモハン目的)
- ラック利用テナント企業:アセット管理、ラック電力利用状況の把握
- 設計部門:各設備リソース利用状況、分析(傾向・推移)とキャパシティ管理
- CxO:全体の稼働状況概要(ポータルダッシュボード)
まだまだ複数のツールや台帳を使ってデータセンターインフラ運用を行っている企業は多いです。それらをなるべくDCIMにより統合化していくことで、データの一元化が進み、それはデータの精度を上げることにもつながり、運用の利便性を向上させます。
つまり、DCIMはデータセンターファシリティインフラにかかわるすべてのステークホルダーのためのツールなのです。
データセンターインフラ運用課題解決に向けたご相談は、DCIMのスペシャリストベンダーである弊社までご相談ください。
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