弊社取り扱いDCIM各製品を比較してみた ~その7:サーバルームのフロアマップ
データセンターのサーバールームを効果的に管理するために欠かせないツールの一つが「フロアマップ(フロアプラン、フロア図面)」です。このフロアマップには、サーバーラックから分電盤(PDU、PDP、PDF盤)や空調機まで、さまざまな機器の配置や情報が登録され、データセンター内のリソースを視覚的に管理するのに役立ちます。
一般的にExcelやVisioなどで作成された静的なフロアマップは、表示できる情報が限定されており、動的に変化する情報をリアルタイムに更新することが難しいという課題があります。ユーザはより多くの情報を把握し、かつ最新の状態を確認したいという要望があります。このような課題に対処するのがDCIM(Data Center Infrastructure Management)ツールであり、それぞれの製品において表示できる項目や機能には多少の違いがあります。
今回は「フロアマップ」に焦点を当て、各DCIM製品の違いを簡単にご紹介します。
1.Sunbird dcTrack
dcTrackのフロアマップはCAD(.dwg)またはVisio(.vsd/.vsdx)形式で作成された図面を取り込んで使用します。ユーザーは目的や好みに応じて、2Dと3Dの表示を切り替えて利用できます。
ラックは、上下2段で表示される表示名とサブ項目でユーザーにわかりやすく識別できるようになっています。サブ項目では、ラックの契約状況や顧客名などを表示するなど、ユーザーアカウント毎に個別に設定可能です。この機能により、データセンター内のラックや設備に関する情報を効果的かつカスタマイズされた形で表示できます。
dcTrackの柔軟性とユーザビリティの高さは、データセンター管理者が効率的に作業できるように設計されています。2Dと3Dの切り替え機能や個別設定可能な表示項目は、データセンターの運用をより直感的で効果的にサポートします。
ラックスペースの埋まり具合や電力容量の空き状況などのキャパシティ状態は色別に分かりやすく表示し、アラートが上がっているラックを赤く表示させることもできます。また、登録された属性情報別に色分けやフィルタ表示することができます。例えば、担当部門別に色分け表示すると分かりやすいですよね。ちなみに高度な検索機能で、絞り込み表示させることだってできます。
ほかにも計測温度に応じたサーマルマップを表示したり、配線経路を表示したりすることもできます。
3D表示は、ラック内搭載機器をリアルに表示してくれるので、ユーザは直感的に現場の設置状況を把握することができます。
2.デンソー garmit
garmitのフロアマップは2Dのみに対応しており、図面はお好きなソフトで作成した画像形式のファイルを取り込んで使用します。
garmitのフロアマップで表示できる主な情報には、アラーム通知とサーマルマップ(温度分布)が含まれます。たとえば、設定閾値を越えたアラーム通知が上がったラックには、アラームを示すマークが付きます。ユーザがそのラックをクリックすると、右側に具体的なアラームの詳細が表示されます。
この方式により、フロアマップ上で直感的に異常状態やアラームが発生した場所を確認でき、迅速な対応が可能となります。また、サーマルマップを通じて温度分布を可視化することで、データセンター内の熱状態を把握しやすくなります。
garmitの強みの一つとして、国内メーカーの電子錠と連携し、電子錠の細かなステータスを表示し、フロアマップ画面上から開閉操作を行うこともできる点です。
また、「連続空きラック検索と電源供給状態の確認」を行える表示といった、実際のユーザニーズを反映したユニークな機能もあります。
もう一つgarmitの特徴である演算機能で演算された値をフロアマップ上に表示させることもできます。例えば「ラック列全体の合計電力」や「ラックコンテインメント内の平均温度」など、いろいろなニーズに柔軟に対応します。
3. FNT Command
FNT Commandのフロアマップは、ツール内のマップ作成機能を使用して作成されます。具体的には、タイルサイズと配列を決め、その上に背景画像を配置して、よりリアルな表示を実現します。なお、この表示は2Dと3Dの両方に対応しています。
フロアマップ上で確認できる情報には、ラック配列、ラック内機器および接続ポート、ラックスペース使用率や電力使用率などのキャパシティ表示、そしてサーマルマップ表示などが含まれます。
また、フロアマップとしての機能以外にも、FNT Commandの特徴の一つである配線管理機能により、3Dのフロアマップ表示でも機器の接続ポートが視認できるようになっています。
キャパシティ表示は色別表示とともに、実際の使用率が分かりやすく表示され、その利便性が際立っています。また、検索機能も備わっており、情報の素早いアクセスが可能です。FNT Commandはこれらの特徴を組み合わせ、効果的なデータセンターの管理をサポートしています。
4.Struxureware Data Center Operation
シュナイダーエレクトリックのStruxureware Data Center Operation(DCO)のフロアマップは2Dと3Dの両方に対応しています。
なお、Struxureware Data Center OperationのフロアマップはCAD図面を取り込んで管理する方式です。
2D表示では、主に電力やスペースなどのキャパシティ状態を視覚化します。
Struxureware Data Center Operationの特徴の一つとして、温度分布や風量をシミュレーションするCFD表示機能があります。ただし、3Dのフロアマップは主にこの表示に使用されることが一般的です。
5.iTRACS
iTRACSのフロアマップ機能は基本的に3Dが基本です。
3Dのフロアマップは完全にiTRACS内の独自機能を使用し、レイアウトからラック配置までを構築する方式です。
物理的なケーブル配管ルートなども作成可能で、非常に柔軟かつ自由に構築できるため、完成時にはかなりの精度で、よりリアルな表示を実現できます。ただし、裏を返せば、これらを作成するのには多大な工数がかかることを意味します。
フロアマップ上で確認できるのは主にアセット情報やケーブルルートなどであり、電力や温度などの計測データに基づく表示は標準機能として提供されていません。
以上、各製品のフロアマップ機能について簡単に解説してみました。ただ、紹介しきれていない部分は非常に多いので、よりもっと詳しく知りたい!と思われた方は、お気軽にご連絡ください。