日本企業の教育投資と現実のギャップ ~経済産業省「未来人材ビジョン」が示す課題と解決策
昨年、2022年の5月に経済産業省が発行した「未来人材ビジョン」レポートでは、AIやロボットなどの社会潮流と共に、現在の日本の雇用・労働環境、人材育成/教育システムにおける様々な問題を具体的なデータで可視化し、生産年齢人口が現在の2/3に減少する2050年に向けて、日本が進むべき方向性の具体策をいくつか示しています。
具体的な問題点として、以下のようなものが実際のグラフやデータとともに挙げられています。
- 外国人労働者は、2030年には日本の至る所で不足するとの予測がある一方、日本は、高度外国人から選ばれない国になっている。
- 日本企業の従業員エンゲージメントは、世界全体でみて最低水準にある。
- 日本では「現在の勤務先で働き続けたい」と考える人は少ない。しかし、「転職や起業」の意向を持つ人も少ない。
- 日本は、課長・部長への昇進が遅い。日本企業の部長の年収は、タイよりも低い。
- 日本では「転職が賃金増加につながらない」傾向が強い。
- 4割以上の企業は、「技術革新により必要となるスキル」と、「現在の従業員のスキル」との間のギャップを認識している。
- 半数近くのITエンジニアが「技術やスキルの陳腐化に不安」を抱えている。
- 企業は人に投資せず、個人も学ばない。
- 日本の人材の競争力は下がっている。
- 海外に留学する日本人の数は減っている。海外で働きたいと思わない新入社員が増えている。
- 多様性は、イノベーション創出にとって不可欠であるが、日本企業の経営者は、「生え抜き」が多く、同質性が高い。また、グローバル競争が過熱する中でも、ドメスティックな経営者が多い。
- 日本では役員・管理職に占める女性比率が低い。
- 東証一部上場企業の合計時価総額は、GAFAM5社に抜かれた。
- 日本の国際競争力は、この30年で1位から31位に落ちた。
この根本原因は、終身雇用や年功型賃金に代表される「日本型雇用システム」であり、それを変えていくことがこれらの状況を改善する最も重要なアクションであると考えます。しかし、今回このブログで取り上げるポイントは、「企業は人に投資せず、個人も学ばない」という現状の打破についてです。
右のグラフは非常に衝撃的な内容です。まず左側の棒グラフは企業が人材教育に投資する割合(OJTは含まない)をGDP比で示しています。もともと諸外国と比べて人材教育への投資意識が低かった日本ですが、近年さらに減少していることが示されています。要するに、日本企業は社外の教育・研修プログラムなどへの投資を行わず、社員への教育は直接的な費用を掛けないOJTが中心であるということがわかります。OJTを悪く言うつもりはありませんが、先輩スタッフが片手間で教える通常業務を中心とした教育と、プロの専門家がすべてをしっかり教える教育プログラムの差は歴然です。
もうひとつ、右側のグラフは、社外学習や自己啓発を行っていない個人の割合を示しています。要するに、日本人は仕事が終わった後にプライベートな時間を使って自己をより高めようとする人が諸外国に比べて少ないということです。
これらのデータから、日本の企業とそこで働く社会人の「学び」に対する意識の低さが浮き彫りになりました。学ばない人と日々コツコツ学ぶ人との比較において、結果がどうなるかは「アリとキリギリス」や「ウサギとカメ」の例を見なくても明らかでしょう。
このレポートの中には、「現場を支える方々を含めて、あらゆる人が時代の変化を察知し、能力やスキルを絶えず更新し続けなければ、今後加速する産業構造の転換に適応できない」という一文もありました。
データセンター業界の話
テクノロジーは絶えず進化しています。私たちが属するデータセンター業界もその最先端に位置し、日々新しい技術が生まれ、エンジニアもその知識を常にアップデートし続けなければなりません。
JDCC(日本データセンター協会)の人材マネジメントワーキンググループが、2021年6月にJDCC会員企業向けに実施した人材育成方法に関するアンケートでは、OJTが9割弱に対し、外部資格研修によるOffJTも6割近くの企業が利用していることが示されていました。この結果を見る限り、データセンター業界は他業界以上にOJT以外の人材投資に積極的であるように思えます。しかし依然としてOJTが主流であることから、各社はより一層OffJTへ重点を掛けていくことを推奨します。
私たちDC ASIAは、データセンターに特化した教育プログラム「DCD>Academy(旧:DCPRO)」を国内で提供し、人材育成やスキルアップに積極的な企業や個人のニーズに応える活動を行っています。
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