サーバルームの資産区分はどのように決められているの?(電源編)
以前、「サーバルームの資産区分はどのように決められているの?(冷却編)」をご案内しました。
続いて、電源編をご案内したいと思います。
(冷却編をご覧になっていなく、電源編からの方もいらっしゃるかもしれませんので、最初の資産区分の説明のところは、引用して記載させていただきます。)
皆様は、「資産区分」と聞いて、すぐにピンときますか?
特に意識する方は、インハウスファシリティマネジャーの方、総務部の方、インハウス向けのサービスを行なう不動産や工事系の業務をされる方かと思います。
まず、案件対応するインハウスのサーバルームファシリティを構築するプロジェクトマネジャー(PM)。
どの設備区分が、どの業者に発注するべきなのか。
今後のメンテナンスや緊急対応も含めてかと思います。
工事の責任分界点の線引きを行ない、PMとして明確にしなくてはいけません。
次にデータセンターの管理者。
ファシリティマネジャー(FM)と言い換えても良いかもしれません。
データセンターは、ITサービスを止めない、歩みを止めないために、ITが稼働するための建築的パフォーマンス、設備的パフォーマンスをいつもいつでも発揮できなければなりません。
パフォーマンスとは何か。
常に安定した状況下で、厳しい状況下であっても、可能な限りITサービスを提供し続けること。
地震でも停電でも、何らかのデータセンター内設備の障害時であってもということになります。
その為に、どの設備がどこの協力会社が、どこまでのサービスをする為のサービスレベル(SLA)を設定し、運用し、指揮することは、データセンター管理者の業務で、かなり重要な位置かと思います。
そして、財務経理部門。
経営に必要なことは、現場だけでなく、どのように財務と連携させるかは、とても重要です。
金額的に高額な設備を必要とする、データセンターファシリティは多数です。
恐らく、資産として計上する金額レベルのものが多く存在するでしょう。
償却していくにあたり、会計上どのように処理するのかFMと連携して、把握しておくべき領域は、財務観点だけでなく、ファシリティの知識も必要になることは、設備が複雑になればなるほど、相応に求められることかと思われます。
さらに、それらを提供するメーカー、建設会社、代理店の方です。
自社ソリューションを提供すること。
そして、お客様の利益に繋がって、世の中の為になること。
それらが、提供する側の企業の経営活動として、求められる理想像だと思います。
それぞれが独立した業務ですが、経営資源であるファシリティをマネジメントすることにおいて、連携をとても意識するはずです。
今回は、資産区分がどのようなものか考えてみたいと思います。
FM業務を、連携していくことを普段からされている方は、資産区分について、意識して携わっていることと思います。
しかし、連携を意識しなくてもよい部門、経験の少ない方は、資産区分について、曖昧なところもあるかと思います。
本来は、契約などに準ずるところなので、ハッキリと明言できないのですが、例を用いて、より一般的(?)に近い形で、展開したいと思います。
工事貸方契約による区分
よく使われるのは、工事貸方契約における、工事区分表というものになります。
レンタルする部屋を借りるにあたり、どの設備がどういう基準で、構築および発注する区分が分けられているかを明示している資料になります。
データセンターでも、普通の賃貸事務所ビルにおいても、所有者から指定されるケースが一般的かと思います。
その区分は、以下のようなイメージではないでしょうか。
・A工事(または甲工事):貸主側で構築する工事(貸主側資産)
・B工事(または乙工事):借主側で構築する工事だが、貸主側の資産や運用に関わるため、貸主側が工事会社を指定する工事(借主側資産)
・C工事(または丙工事):借主側で構築する工事だが、貸主側の館内規則に従って行なう工事(借主側資産)
オフィスの内装工事の区分は大まかにどのようなイメージか
通常のオフィスビルですと、スケルトンインフィルで貸し出される部屋は特別な工事貸方契約でない限りあまり見かけないのではないでしょうか。
よって、ある程度は内装が整ってから、貸し出されます。
A工事として、あらかじめ、壁、天井、床は用意されているのが多いと思います。
ビルの内側の部屋の壁面は、コンクリートだったり、石膏ボードだったり、クロス貼りのような仕上げでしょう。
天井は天井ボード(岩綿吸音板)のような仕上げでしょうか。
床はフリーアクセスとタイルカーペットのような仕上げでしょうか。
つまり、ある程度内装が、貸室単位で仕上がったところで、貸し出されるのが一般的かと思います。
B工事として一般的なのは、内装を自由に行ないたいテナントが、A工事の内装仕様を変更させることかと思います。
自社のイメージカラーやアメニティを追求する場合、貸室の内装仕様では、満足しないからという理由でしょうか。
また、会議室や事業部門毎の事務室など、貸室内部で間仕切りを天井から床まで行ないたい場合、照明や防災など、ビル側の設備増設や変更を行なう理由から、B工事になる例も多いかと思います。
C工事は上記以外の工事として、ローパーティション(天井まで区切らない間仕切り)、什器備品の類が該当するかと思います。
あまり工事区分を意識して業務しない方は、驚くかもしれませんが、建物によって、多くのルールや運営上の考え方を守る必要があることから、工事区分を細分化するのです。
この例に留まらず、別の区分を定義する建物もたくさんあり、契約書などにより、工事区分をよく理解しなければ、円滑な構築をすることは難しいでしょう。
データセンター電源の工事区分はどうなるか?(例)
まず、通常のオフィスビルですと、以下のイメージかと思います。
・A工事(または甲工事):分電盤と壁面コンセントが設置済み。(分電盤容量50VA/㎡とか能力上限あり)
・B工事(または乙工事):分電盤以降の配線およびコンセント設置、または分電盤の改造・増設工事。
・C工事(または丙工事):B工事で設置したコンセント以降のOAタップなどの簡易設備。
電源はEPS(電力シャフト)内の分電盤を触ることから、B工事とする場合が多いかもしれません。
または、分電盤の個別ブレーカー以降の配線やコンセント設置は、C工事としてもよいという場合もあるようです。
では、サーバルーム電源ではどうでしょうか。
サーバルームでは、ラック当たりの電源能力は、IT機器の処理能力によって決まることから、通常のオフィスビルと異なり、あらかじめ所有者が準備することは、大変難しいです。
電源の容量は大きくなればなるほど、ブレーカーや配線が巨大化していきます。
いくつか方式がありますので、それぞれ工事区分をイメージしたいと思います。
〈分電盤方式〉
・A工事(または甲工事):受変電設備、自家発電機、UPS以降から分岐した引込開閉器まで。
・B工事(または乙工事):A工事引込開閉器以降の電力幹線、分電盤、ラックまでの電源配線、コンセント設備。
・C工事(または丙工事):B工事コンセント設備以降のラック内コンセント設備(インテリジェントPDUなど)。
〈バスダクト方式〉
・A工事(または甲工事):受変電設備、自家発電機、UPS以降から分岐した引込開閉器まで。
・B工事(または乙工事):A工事引込開閉器以降の電力幹線用バスダクト、プラグインボックス(バスダクト用開閉器箱)、ラックまでの電源配線、コンセント設備。
・C工事(または丙工事):B工事コンセント設備以降のラック内コンセント設備(インテリジェントPDUなど)。
電源容量はIT機器やラック数に左右されるため、ラックに近いブレーカーや配線は、A工事で準備せず、B工事やC工事で準備します。
サーバルームにおける電力は、監視対象になることが一般的ですので、B工事とC工事で切り分けることが多いと思います。
分電盤やバスダクトに設置するブレーカー単位で、データセンター側が電力監視します。
そして、ラック内のインテリジェントPDUで借主側が電力監視するのが、理想的な形かと思います。
特にインテリジェントPDUは、電圧やコンセント形状、監視機能もたくさんの製品があるため、選定に迷うところがあるかもしれませんが、ユーザーに合った製品をきちんと選びたいところです。
これは、あくまで例なので、入居する建物の制度をよく学ばなくてはいけません。
建物によっては、これらと異なる工事区分表もあります。
バスダクトについては、特殊性から借主が選定することができ、施工だけB工事とすることもあるようです。
インテリジェントPDUとバスダクトのご紹介
我々DC ASIAでは、これら製品の取り扱いをしています。
前述の通り、インテリジェントPDUは、電圧やコンセント形状、監視機能もたくさんのラインナップがあります。
・インテリジェントPDU | 取扱メーカー多数
※当Webページにて、各メーカーのPDUセレクターが閲覧できます。
・BlackBus | 共同カイテック
DC ASIAでは、皆さまのデータセンターのコンサルテーションを積極的に行っています。
相談してみたら、データセンター構築や運営のヒントが見つかるかもしれません。
データセンターファシリティの知見について、DC ASIAは小さい会社ながらも自信を持っています。小さな疑問でも結構ですので、是非ご相談ください。
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